忘れられない人

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この季節になると思い出す人がいる。

忘れられない女性。



顔は覚えていない。

名前は知らない。

声も聞いていない。

話もしていない。



だが、今どうしているのかと忘れられない。



10年ほど前、私は1人でネットで生計を立てていた。

不規則な時間に働き、徹夜が続き、週に2-3回浅草にあるスーパー銭湯に行っていた。

そこは昼間は女性や家族連れも多く、夜は当然だが男性8割、カップル2割程度であった。



平日のある日、気分転換にとスーパー銭湯に立ち寄った。

深夜だが、2500円で一晩ゆっくりできるし、サウナもあるし、なにより私には私を待つ家族がいない。



サウナと浴場と休憩室を何度も往復していた。

その度に1人の赤ちゃん連れの女性を見た。

夜の10時にも、12時にも、深夜の2時にもラウンジで、ビルの外の桜を見ながら、立って子供をあやしていた。




最初は夫婦の奥さんが旦那が浴場から出てくるのを待っているのだろうと思っていた。

しかし、何度サウナから出てきても、その女性はいた。




「行くところが無いんだろうか」

そう思った。



それが男性なら、私は声を掛けただろう。

私の部屋には、ホームレスで独立したい人が入れ替わり立ち代りで、泊めていたのだから。

だが、その人は女性。

ためらった。




夜中に「泊まるところがないなら・・」と声を掛ければ、誤解されるだろう。

私が女性なら、弱みに付け込んだ男と思うだろう。

しかし、幼い赤ちゃん連れ、誤解した上でも子供の為にとついてくるかもしれないと思った。

もちろん、そんな下心は無い。



何故なら、私もずっと行くところも帰るところも無い人間だからだ。

結局、誤解を恐れて声は掛けなかった。



朝が来て、清掃のためいったん閉館になり、客はみな帰宅の道に着いたが、彼女は結局赤ちゃんを抱えたまま、1人外に出た。



夫婦喧嘩で飛び出した奥さんなら、家に帰れただろう。

そうだったらいいのに・・・この10年間、何度も思った。

女1人、子供を抱えて生きていくというのは、男性が思う以上に過酷で辛い。

どうしているのか。

子供のためと言い聞かせて、自分を殺すような生活になっていないか。






今頃、「そんな時もあったわね」と小学生の子供と、優しい旦那さんに囲まれて、桜の木の下で彼女が笑っていたら、どんなにいいか。





そう思う。

そう思いたい。

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