ファミレス

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「セックス好きじゃなきゃ、こんな仕事してないわよ♪」

7年ほど前の新宿のファミレス。

大声で開けっぴろげに話し、アハハと笑う。

わしより5歳ほど若いはずの女性。

友人と呼ぶには心の距離があり、知り合いで済ますには色々知りすぎていた女性。

出会いは10年ほど前のカメラマン時代であった。

その他大勢のひとりから、スカウトがきっかけでグラビアにデビューした。

後で知った話だが、初めてのグラビア撮影が私だったらしく、
顔でニコニコ表情を作っていながらも、内心では、
「カメラマンは手が早いというし、他に人もいないから、
きっとこの人に誘われたらついて行かなくちゃいけないんだわ」と
恐れおののいていたそうである。

まぁ、私の場合、好きな人がいない時はゲイ並みに女を遠ざけるので、
そんな可能性は1億分の1もなく、そんな心配は無用だったのだが・・。

その撮影後も、事務所の社長と仲が良かったせいもあり、何度か撮った。

撮るたびに笑顔は洗練されたものになり、ポージングも上手になった。

代わりに着させられる水着は小さくなり、瞳の奥に険が潜むようになった。

だが、しばらくすると雑誌やテレビで名前を聞かなくなった。

1年ほど経った頃だろうか、スタジオを訪ねてきた。

ビニールだったバッグはブランド物になり、ヒールも高くなっていた。

近くで働くようになったから、ちょっとみんなの顔見にきたとの事だった。

ファミレスに行き、ハンバーグを食べた。

聞く前に判っていたが、やはり今は風俗で働いていると言う。


私は、風俗と言うものに偏見は無い。
危険でイリーガルな一面もあるが、本人の意思である。
人生捨てるも拾うも、本人の意思。尊重するしかない。

風俗に関しては、決して薦めはしないが、本人の意思なら止めはしない。

もし止めるなら口だけではなく、代わりの方法を提案するか、
自分の言葉に責任を持って支えるしかない。

それが出来ない以上、口出しは出来ない。

聞けば、生半可な風俗ではなく、いわゆるデートクラブだった。

知らない方のために言えば、電話でホテルに呼び出され、見知らぬ男性に「接客」する。
擬似的なものではなく、本当にエッチをする業種であり、
いろいろな面で危険に満ちているが、売れれば日の収入は両手を超える。

嫌な客、嫌いな客の話をそうかそうかと聞いていた。

彼女には言いたくない闇があり、私には触れて欲しくない闇が見えた。

生半可な覚悟で生きていける業種ではなく、精神的に自己崩壊する者も多い。




「セックス好きじゃなきゃ、こんな仕事してないわよ♪」

そう大声で話し、屈託ない笑顔で笑う。

私もくだらない話で笑わせながら、なにかを言い出すのを待っていた。

顔を赤らめながら、話を切り出した。

彼女のことを気に入って、何ヶ月も給料を切り詰めて通ってくれる男性がいるという。

デートに誘われ続け、断り続けたが、それでもアタックし続けていると言う。

何度も肌もあわせていると、ひととなりが話さなくても判ると言う。

彼女もまんざらではなく、デートも楽しみらしく、
人を好きになれたことが今更ながら嬉しいと言っていた。

のろけ話をしばらく聞き、もうすぐ仕事の時間との事で店を出た。


「また、なんかあったらおいで。みんな待ってるから顔見せに来な」


初めてあった頃はヒールを履くとヨチヨチ歩きだった彼女が、
高いハイヒールで小走りに仕事に向かっていった。


当時、消えていくその背中を見ながら、風俗で働く彼女が、わざわざ私を訪ねた理由がわかった。

風俗のことを知らない身内や友人には言い出せもせず、
客には本当の自分を見せるわけにも行かず、
好きな人にはグチも聞かせられず、
降ろし場所、捨て場所に困った心の荷物を、
どうでもいい私のところに捨てに来たのだと思った。



その後、会うことも無く、噂も聞いていない。

おそらく、もう2度と話すことも会うことも無い。


「今度、お客とデートするの♪」


そう言った時の笑顔のままで、好きな人と一緒に慎ましくいてくれたらと心から思う。



数日前、風俗に就職する少女のレポートをテレビでちらっと見かけた。

ふと、そんなことを思い出した。



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