春にして、春を想う

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昨晩、2人の父の姿を見た。

ひとりは、数度電話で話したことがあるだけの今は無名の若き父。
昨晩、彼は人の親となった。

ひとりは、たまたま見た映画で描かれたボクサー。

シンデレラマンと呼ばれたそのボクサーは、実力を持ちながらも、
怪我と大恐慌という時代に飲み込まれ、貧困に喘ぐ。

厳冬の中、妻と3人の幼子を抱えながら、電気を止められ、
幼子はひもじさから盗みにまで手を出してしまう。

数ドルの為に、因縁のある人々に恥をさらし、救いを乞う状況。

ある日、彼に試合が舞い込む。

現役を離れていた彼には危険な試合で、序盤から攻め立てられる。

左右のコンビネーションから、強烈な右ストレート。

試合を見守るものが彼のダウンを確信するその刹那、彼の脳裏には、
彼の帰りを待つ子供と妻の姿。

与えたくとも与えられない状況への焦燥感と後悔。

その瞬間、足を踏みしめ、自分の吐き出したマウスピースを平然と拾い、
試合を続行する・・。


女性は出産と言う行程を経た直後に、「母」という存在になるが、
男性はおそらく徐々に「父」という存在に近づいていくのだろう。


昨晩、父になった名も無き若き男。

彼と交わした少ない言葉、まだ幼さすら感じる彼の声を聞きながら、
そんな思いを感じる。

彼にも、シンデレラマンのようにマウスピースを吐き出す瞬間は来るだろう。

不条理に感じることもあれば、心無い人の非難に苦しむときも来るだろう。

だが人生の喜びと哀しみを知った彼が、昨日見上げた空を忘れることあるまい。

「母は強し、されど父も強し」である。


今はただ彼の新しき門出を祝いたい。
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