かなしみ笑い

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だから 笑い続けるだけよ 愛の傷が癒えるまで
喜びも 悲しみも 忘れ去るまで

遊び歩いた あげくの恋は 別れやすそうな 相手を選んで
二度と 涙流さないような 軽い暮らしを 続けてゆくのよ

だって 仕方がないじゃないの あなたは二度と戻って来ないし
ひとり暮らしを するのはつらい あなたを待ち続けた あの部屋で

ひとり 待ちわびて 待ちわびて 時を 恨むだけ
だから笑い続けるだけよ 愛の傷が癒えるまで
喜びも 悲しみも 忘れ去るまで

恨んでいられるうちは いいわ 忘れられたら 生きてはゆけない
そんな心の誓いも いつか 一人笑いに 慣れてしまうもの

酒と踊りと歌を 覚えて暗く輝く街へ 出かけよう
そこで覚えた 暮らしが いつか
生まれながらに 思えてくるまで

そうよ 待ちわびて 待ちわびて 時を 恨むだけ

だから笑い続けるだけよ 愛の傷が癒えるまで
喜びも 悲しみも 忘れ去るまで




歌姫・中島みゆきの名曲「かなしみ笑い」である。

失恋ソングというより、別れ歌というべき1曲。

男に捨てられ、希望を見出せず、刹那的な暮らしにのめり込もうとしても
のめり込みきれず、自嘲的に笑うしかない悲しい女。

聞いていて自然に涙が出てくる1曲。


20代後半の1―2年間、飲めない酒を飲んでは路地裏で
反吐を吐くような生活をしていた時期がある。

絶望としか思えない出来事があり、体を引き裂かれるような失意のどん底であった。

働いていた新宿のスタジオから程近い飲み屋で、飲めない酒を飲み、
店を出て歌舞伎町を歩き回っては、また店に戻るという事を繰り返し、
結局はスタジオで毛布をかぶっては、泣きながら寝ていた。

歌舞伎町はある意味危険な街で、ひどい目にあう者も多いが、
ふとした瞬間、はっとする出会いのある街でもある。

午前1時を回ると、会社員は家路に着き、カップルはホテルに消える。

饐えた目をした黒服と、酔いつぶれた学生ばかりが街に残る。

コマ劇場近くの路地で酔いつぶれ、苦しくて泣いているのか、
悲しくて泣いているのかわからず、こみ上げてくるものを吐きながら
そのなかに座り込んでいたときに、背中をなでてくれた女性がいた。

見た瞬間に街頭で商売を営んでいるとわかる女性。

「おにいさん、大丈夫?」

そう言われ、そのちょっとした優しさに戸惑った。

商売の邪魔してすまんと詫びると、客がつかずお茶をひいていたという。

お詫びにと知っている店に行き、話すともなく話した。
身の上話もせず、互いの詮索もせず。

店の照明の下では40代とわかるその女性は、
どう見ても美人とはいえない女だったが、優しげな表情を浮かべる人だった。

話さずとも、お互い相手のような人間はそれこそ掃いて捨てるほど見ている。

その人は店の親父の作った料理を、子供に食べさせるからと包んでもらい、
一緒に店を出たのが朝の5時ごろ。

ごみとカラスのあふれる街を新宿駅に向けて、とぼとぼと歩く。

彼女が歌うともなく歌う鼻歌が、中島みゆきのこの歌だった。





中島みゆきの詩ではないが、別れ歌を歌う人間は歌いたくて歌うのではない。

それしか歌えないから、歌うのだ。

「残されてとまどうものたちは追いかけて焦がれて泣き狂う」

そんな歌詞をいい加減に歌いながら、東口の階段に消えていった。

名前も知らず、その後歌舞伎町でも会わなかった。

会ったとしても、その時はもうお互い違う表情になっていただろう。



歌舞伎町という不夜城に浮かぶ蜃気楼のような一期一会だった。



もう街角に立ってはいまいが、どうしていることか・・。

ふとそんなことを想った。
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