ここでは、「涙」 に関する記事を紹介しています。
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いつの頃だったろう・・。

私が新宿で勤め人だった頃だから、3年程前だったろうか。

新宿駅東口の紀伊国屋書店の前で、知人と待ち合わせをしていた。

秋か初冬の頃だったと思う。

グレーの公衆電話が並ぶ横で、文庫本を手に知人を待ちながら道行く人を眺めていた。

紀伊国屋書店の裏手へと通じるその通路に女性が立っていた。

25歳くらいの女性だったと記憶している。

「この人も待ち合わせか」と思った。

しばらくして、ふと目をやると、その女性が泣いていた。

小さな鞄を両手で持ったまま、声も出さず、ただ静かに泣いていた。

思わずはっとしたが、声もかけられずにいた。

人通りの多いその場所では、誰かが泣いていても、皆一瞥して通り過ぎていく。

何千人が行き交う街中で、ひとりの女性がただ静かに泣いていた。



今日、何年かぶりに私が手にした文庫本は、
その時、私がその女性の傍らで手にしていた本だった。


その女性の顔も、髪形も覚えていない。

鞄を握り締める小さな手と、その涙は覚えている。
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